あしふぇち

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 かつての同胞達の瞳には、もはや光すら失われている
「なんだよ脚フェチって、OPPAIが至高だろ!」
「そうだぜ!!」
 正気を失ってしまっている
 彼らは、正気を失ってしまっているのだ
「まさか、女の子が背伸びした時の足首のキュッていう良さを忘れちまったっていうのかよ」
 俺は、かつての同胞達に必死に語り掛けるが、彼らは聞く耳持たず
「何だよ、脚なんて堅いだけじゃん。OPPAIの柔らかさには勝てねえよ」
「そうだ!! OPPAIこそ正義!!」
「コイツ絶対変だって、あっち行こうぜー」
 そう言うと彼らは皆去っていった、そうして俺は一人立ち尽くした
「お前ら、あの頃を思い出せ! 目を覚ませよ!」
 泣き喚こうとも叫ぼうとも、俺の言葉を聞く者は誰も居らず
 いや……一人居たか
 俺にとって地獄の様な状況を作り出した忌むべき敵
「目を覚ますのは……」
 何処からか飛んできた強烈な飛び蹴りは、
「お前じゃああああああああああああああああッッ!!」
 俺の顔面にクリーンヒットし、その瞬間俺は数十メートル吹っ飛ばされる
 見事に喰らった
 いや、喰らってやったというのが正しい表現
 避けようと思えば簡単に避けられるのだ
 何故なら俺には、飛んでくる彼女の蹴りと脚の描く軌道、更にはクマ柄のプリントされた子供っぽい下着まで
 全てが見えているのだから
 脳を揺らされた衝撃で意識が朦朧とする中、倒れ伏す俺にさらに追撃をかけるように少女が疾風の如く間合いを詰めてくる
「こんのッ……!! 脚フェチのッ、ド変態がッ!」
 少女はゲシゲシと虫でも踏み潰すかのように、俺を踏んで踏んで踏んで
「ふんっ!!」
 これで最後とばかりに、まるで蹴鞠でもするかのように軽々と、俺を蹴り上げた
 少女のものとは思えない程の脚力で蹴り上げられ、俺の体は宙へ浮き、そのままドサリと地面に落ちる
 少女は満足したかのように鼻で笑うと、俺に背を向けてその場を去ろうとした
 しかし、俺は少女に声をかけた
 ふらふらと立ち上がりながら、声をかけた
 待てよ、と
 まだ終わっちゃあいない、と
 少女はゴミでも見るような目つきで俺の方を向く
「良いね……その目、最高だ」
「あれだけの攻撃を受けて、まだ立つの?」
「へへ……まさか……これで、終わりとか……言わない、よな?」
「何処までもしつこい……一撃で肉片飛び散らすゴキブリの方がまだマシだわ」
「さぁ、続けようぜ……お嬢ちゃん」
「言われるまでも無いわ。その醜い口が呻き声さえ紡げなくなるまで、踏み潰してやるんだからッ!!」
 その返事を聞いて俺は安心する、彼女は本気だ
 本気で俺を潰しにかかってきている
 脚フェチ同好会の最後の生き残りである俺を、脚でボッコボコにする事によって脚嫌いにして真人間に戻す
 そうする事で、同好会の中で至高の脚ランキングトップに君臨する目の前の少女は、自らの安息の日々を得ようとしているのだ
「俺は脚フェチ同好会の会長だ……他の奴らとは信念が違う、背負っている物が違う……この意味が分かるか?」
「その強がりがいつまで続くかしらね」
「そんじゃ、俺もそろそろ本気を出させてもらうぜ」
 俺は、おもむろに服を脱ぎ捨て、パンツ一丁になる
 少女の脚の動きと震えから、少女が戸惑っているのが分かった
 本気を出した俺にとって、服なんて邪魔以外の何物でも無い
「なっ!? 何をッ」
 少女は慌てふためいてジリっと後退る
「さぁ!! 来いよ!! 全力で受け止めてやる、お前の蹴りをッ!!」
 俺は挑発するように少女に語りかけ、五体全てを地面に密着させる
 これこそ俺の最強の構え、完全服従のポーズ
「あっ、叩くのは無しだかんなっ!!」
「……」
 そうして俺は、警察に補導された

▲モドル